
中小企業の7割がDX初期段階。経営データの可視化から始める業務効率化と二極化脱却の方法
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日本企業の多くがデジタル化に踏み出すなか、大企業と中小企業のDX推進には依然として大きな差があります。GX(グリーントランスフォーメーション)とDX(デジタルトランスフォーメーション)の両輪で変革を進めるべき時代において、中小企業はどのようにデジタル活用を進め、持続可能な経営体制を築いていくべきなのでしょうか。
今回は、フォーバル GDXリサーチ研究所 所長の平良学氏に、中小企業の現状とDX/GDX推進のポイント、さらに地方企業の変化や人材育成のあり方について伺いました。変革に踏み出した企業とそうでない企業の二極化が進む今、未来を切り開くためのヒントを探ります。
目次
はじめに
フォーバル GDXリサーチ研究所の所長を務める平良学氏は、1992年のフォーバル入社以来、地方支店の立て直しやコンサルティング事業を通じて中小企業の現場を見つめてきました。
2022年10月、コロナ禍で露呈した中小企業だけでなく、行政のDXの遅れ(給付金申請がFAXで行われるなど)を背景に、同研究所を立ち上げます。
現在、フォーバル GDXリサーチ研究所では行政と中小企業の間に立つ”橋渡し役”として、中小企業経営者の経営実態を調査し、まとめた白書 「ブルーレポート」を発行し、世の中に中小企業経営の実態を発信しています。「デジタル化は目的ではなく経営の手段」「まずは可視化から始める」という姿勢で、中小企業でも取り組みやすいDXの普及に取り組んでいます。
意識改革段階以下が7割強。変化をチャンスに変える企業と様子見企業で広がる差
ーー大企業ではDXが進んでいますが、中小企業におけるDXの進捗はどのような状況なのでしょうか?
フォーバル GDXリサーチ研究所 所長 平良学氏(以下、平良):中小企業のDXは二極化が進んでいるのが実情です。「第4回 中小企業のDX推進実態調査」では、「意識改革段階以下」と回答した企業が7割強を占めており、まだまだ現場にはDXが浸透していないことを示しています。
大企業では専門部署をつくり、専門人材を登用しながらDXを進めているわけですが、中小企業では同じようにはいきません。
また、地方と都市部の情報格差も大きいのが現状です。例えば、インバウンドツーリズムではそれが顕著に出ています。外国人観光客は、キャッシュレス対応している店やSNSで情報を取得できる店が訪れやすいわけです。
うまく対応できている事業者は、地方という不利な場所でも人気店になっています。その一方で、対応できなかった事業者はインバウンドの恩恵を得られず売上も上がりません。そのようなことからも、どんどん二極化の状態が進んでいる状況が如実に表れていると感じています。
変化の波をチャンスと捉えるか、それとも様子を伺って静観するかによって、企業の未来は大きく変わると思いますね。
業務の“見える化”がDXの最初の一歩。高度なツールの導入よりまずは現状把握
ーー本格的なDXになかなか踏み出せない企業は、何から着手すべきでしょうか?
平良:中小企業の場合は、いきなり本格的なDXを推し進めるのは難しいので、まずは小さなことからデジタル化を進めるべきです。既存の業務を少しずつデジタル化することにより、今まで3人で行っていた業務が1人でできるようになるなど、目に見える変化が現れてきます。
まずは、高度なツールを導入するよりも、現状を可視化することが何よりも大切です。時間やお金の流れを可視化し、実際に動く際には必要に応じて外部機関へ伴走を依頼するのも良いでしょう。可視化さえできれば、効率化を推し進めたり、新たな事業の判断をしたりすることが可能になります。
中小企業では、会計に関することは税理士さんに丸ごと依頼しており、その年の成果が見えるのは年度締めの半年後という場合も少なくありません。目の前にある資金は何の利益なのか分からなかったり、投資した額がきちんとリターンを生み出しているのか見えにくかったりすることも多いのです。そもそも、どの部分を変えれば経営にインパクトが出るのか分からず、経営戦略が立てにくくなっている企業も少なくありません。
ーーDXが上手く進まない企業に必要なことは何でしょうか?
平良:経営者が「DXを推進する」という強い覚悟を持つことが最も重要です。
たしかに、DX担当者に外部のセミナーなどへ参加させると、担当者がDXの重要性を認識することはできると思います。しかし、そもそも経営者がDXの重要性を理解しきれていなければ、いくら担当者が経営者に説明しても重要性を伝え切ることは難しく、会社としてリソースを割くことは難しいという現実があります。
また、DXを目的化するのではなく、自分たちの会社をどのようにしたいかというあり方を先に確認することが重要です。そこで初めてデジタル技術の活用が意味を成してきます。
経営者には、思い描く事業展開やさまざまな想いがあるはずです。まずは経営者がDXの重要性を理解し、かつ目的を改めて言語化することが求められます。
AI未活用が7割。従業員の知識不足と社内データ蓄積不足という2つの壁
ーーDXとAI活用は密接に紐づいていますが、中小企業のAI活用はどのくらい進んでいるのでしょうか?
平良:私たちが実施した「中小企業の次世代戦略への対応調査」では、AIを活用していない中小企業は全体の約7割を占めています。その理由としては、「従業員がAIを活用できるか分からない」「社内でのAIに関する基本的な知識が不足している」という回答が挙げられています。
部分的にはAIを活用できている企業もありますが、ネット上のオープンな情報を取得することはできていても、社内独自のデータを読み込ませ、それを適切な形で取得できている中小企業は多くありません。
その理由としては、中小企業にはそもそも自社のデータが蓄積されていないからです。データが蓄積されていないとAIの学習も進まず、結果的に情報を活用することができません。AIを活用したくとも、活用するためのデータが揃っていない中小企業が多いのが実情です。

出典:フォーバル GDXリサーチ研究所「中小企業の次世代戦略への対応調査」
データサイエンティストは不要。デジタルネイティブ世代の日常スキルが中小企業を変える
ーーデジタルに精通している人材の採用はハードルが高いと聞きますが、人材採用や育成についてのお考えをお聞かせください。
平良:まずは大手企業で求められるデジタル人材と中小企業で求められるデジタル人材はまったく違うということをお伝えしたいです。
先ほど申し上げた通り、中小企業にはデータが蓄積されていないことも多く、いわゆるデータサイエンティストのような方がいても活躍の場が十分にない状況もあります。
その一方で、中小企業では必ずしも専門知識がなくともデジタル人材として活躍できる可能性があります。デジタルネイティブ世代の若者は日常的にAIを活用したり、情報の受発信をしたりしています。
こうした若い世代が中小企業のDXに携わるなかで、社内の情報共有の方法を変えたり、社内の情報を発信したりするだけで中小企業の売上や生産性の向上に寄与する例は少なくないのです。
ーー若い世代が身に付けているスキルを地方や中小企業で活用できれば、各方面にとって良い影響がありそうですね。
平良:そうですね。地方の中小企業を支援するなかで、若者と地方の中小企業を上手くマッチングできれば、地方の若者の人材流出防止に繋がるという期待感があります。
地方の学生の多くは、自分のスキルを活用するために都市部の企業への就職を望みます。しかし、授業やインターンシップなどを通して、自分たちが何気なく身に付けたスキルが地方の中小企業の生産性を上げたり、付加価値を上げたりすることに役立つと分かると、地元就職も視野に入るのです。
現在、私たちは5,000人ほどの学生さんに向けてDXを学んでもらう機会を提供しているのですが、この取り組みが地方の中小企業と優秀な学生のマッチングの役割を担えると考えています。
デジタル人材を求めている地方の中小企業と、やりがいを持って働きたい学生をマッチングすることで、学生・企業・地域の三方良しの関係を築けると考えています。
属人的業務と暗黙知からの脱却。スキル可視化で見える社内の能力と不足領域
ーー従業員のスキルのデータ化については、どのようにお考えですか?
平良:他の情報に比べると、従業員のスキルやパフォーマンスのデータ化には難しい部分があるのは事実です。「第4回 中小企業のDX推進実態調査」でも「月次売上/利益」は約半数がデータ化できている一方で、「スキルとパフォーマンス」をデータ化している企業は9.7%に留まります。
中小企業では、そもそも属人的に仕事を進めたり、暗黙知になっていたりすることが非常に多いので、この辺りを可視化することは十分にできていません。しかし、可視化さえできれば、社内にも幅広い能力があると気付いたり、逆に新たに身に付けなければいけない能力が分かったりします。
自分自身のスキルが可視化されることで、従業員の方々も能力開発に興味を持ったり、自主的に動いたりできます。スキルと人事評価を結び付けて昇給に繋げられるとモチベーションも向上しますし、労働時間と生産性をリンクさせることも利益向上には欠かせません。
スキルの可視化は従業員の能力開発やキャリアづくりにも色濃く反映されるので、推進していくべきだと考えています。

出典:フォーバル GDXリサーチ研究所「第4回 中小企業のDX推進実態調査」
後編では、抵抗勢力とのコミュニケーションの取り方や業界ごとのDX事例について深堀りしていきます。
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