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業務属人化の原因と解消するための実践的ステップ

業務属人化の原因と解消するための実践的ステップ

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業務の属人化は、企業が明確な課題として認識しながらも、容易に解消へ至らないのが現状です。特にベテラン社員に依存している業務が多い組織では、突然の退職や異動により業務が停止するリスクを常に抱えています。

しかし、いざ属人化解消に取り組もうとしても「何から始めれば良いかわからない」「マニュアル作成を試したが失敗した」という声を耳にします。

スタディストで企業の業務効率化に長く関わってきた坂野亜希子に、ベテラン社員の属人化解消を成功に導くための具体的なアプローチについて話を聞きました。

はじめに

坂野は、慶應義塾大学卒業後、国内大手金融機関で法人営業として経験を積み、その後人材開発部門で全国の法人営業担当や新入社員の教育に携わりました。コンサルティング会社での研修企画や講師業務を経て、2016年に株式会社スタディストに参画。営業やカスタマーサクセスを担当した後、現在はリーンソリューション事業部で人材育成コンサルティング・研修サービスの企画開発を手がけています。長年にわたり人材育成の課題解決に尽力してきたエキスパートです。

ベテラン社員による業務属人化の原因と企業のリスク

―― まず、属人化の悩みを抱えながらも、属人化解消が進まない企業が多い理由を教えてください。

坂野:企業において属人化解消が進まないのは一見すると円滑に業務が進んでおり、属人化解消に向けた問題解決が後回しになってしまっているためです。緊急性のある仕事を優先し続けた結果、業務の属人化がますます進行するケースもあります。

また、主にベテラン社員による業務の抱え込みも、属人化解消が進まない原因の一つです。

そもそも属人化とは「担当者にしかできない・わからない状態の業務がある」状態を指します。つまり、属人化した業務こそが該当社員の「存在意義」になり、問題として上がってこない場合があるのです。

とはいえ、属人化を明確なリスクと捉える企業は年々増えているように感じています。この10年で人材の流動化がますます進むなか、当社には「属人化を解消したい」だけでなく「属人化を未然に防ぎたい」という考えを持つ企業からの相談が数多く寄せられています。

属人化解消の第一歩は「現状の可視化」

ーー属人化解消へ向けた業務分類を進める際は、何から始めたらいいのでしょうか?

坂野:「現状の可視化」が、属人化解消への第一歩です。

抱えている問題の全容が見えないと、物事に優先順位をつけたり、適切な方針を定めたりすることはできません。いざ属人化解消に取り組もうと思っても、どこまで対策すればよいのかゴール設定も不明確になってしまいます。

「現状の可視化」をするためには、属人化した業務を羅列する作業から始めることが大切です。情報の粒度は、作業手順書のようなマニュアルを作成できるかを基準にすると、特定の人材にしかできない業務が浮かび上がります。

業務の洗い出し方法はいろいろありますが、例えば当社が「現状の可視化」のために提供しているのは、社員同士で意見を出し合えるワークショップ形式のサービスです。対象業務を網羅的にスピーディに抽出するのに効果のある手法ですが、業務の現状がきちんと見える化できるのであれば他のやり方でも問題ありません。

なお、高い知見やスキルを持つベテラン社員の中には、自身の業務が属人化していることに気付いていないケースがあります。そのような場合は、ヒアリングの実施により「現状の可視化」に成功することもありますね。

ーー「現状の可視化」を実施した後は、どのようなステップを踏む必要がありますか?

坂野:「現状の可視化」ができたら、次に業務内容をA・B・Cに分ける「ABC分類」の実施が有効です。

「A業務」は予測が困難で、豊富な知識や経験に基づいた専門的判断が求められる業務。「B業務」は複数のパターンに分類でき、状況に合わせて適切な手順を選択する業務。そして「C業務」は誰でも同等の成果を出せるよう設計された業務で、3分類の中で最もマニュアル化しやすいのが特徴です。

A業務とB・C業務では属人化を解消するための最適な打ち手が異なります。B・C業務に関してはマニュアル等に落とし込むことで形式知に変え、誰でも再現できる形にすることで属人化解消を図れますが、A業務に関しては経験を積ませることで感覚をつかんでいくという伝承スタイルが向いています。

分類を行わず、一律マニュアル化するという方向でA業務のマニュアル化を試み、失敗してしまうというケースもあります。ABC分類

企業方針に基づくABC分類の実践方法

ーー ABCの分類を正しく見極めるために必要なことはありますか?

坂野:当社が実施しているワークショップでは、この業務はAかBかCかという分類に「正解」はなく、その企業ごとのポリシーや事業方針によって分類分けの正解が変わることを伝えています。例えば「寿司を握る」という業務も、企業のポリシーによってA・B・Cのいずれにも分類される可能性があるのです。

職人が熟練の技術を駆使する高級寿司店では、「寿司を握る」は「A業務」に該当するでしょう。その一方で、どの店舗でも同じクオリティの寿司を提供できるようになることを目指しているチェーン店の場合「B業務」もしくは「C業務」に分類するのが適切な場合が多いです。

つまり「ABC分類」を正しく実施するためには、社員同士で「私たちが実現したいことは何なのか?」「私たちはどうあるべきなのか?」のスタンスをあらかじめ決めておく必要があるのです。

ーー「ABC分類」をする際に考慮したほうが良い点はありますか?

坂野:属人化している業務を該当社員が抱え込み、強引にA業務であるとし、周囲が何も言えなくなるパターンがあります。そのような場合は、「企業のポリシー」と照らし合わせて分類を行うことをあらためて説明し、組織内での認識を合わせた上で現状の可視化に取り組んでもらうことが必要です。

その他の注意点として「正しく分類ができていない」ケースが考えられます。例えば、Aに分類した業務でも、「業務の一部はB・Cに分類することができ、マニュアル化が可能」な場合があるのです。

一見すると完全にA業務のように思えていても、業務内容を分解していくと「(判断をするために)こんな準備をしています」「この箇所は必ずチェックしています」など、マニュアルがあれば誰でも実施できる部分が見つかることもあります。

その一方で、例えば音を聞いたり温度を感じたりなど、経験を重ねなければ習得できない内容もあります。その方が実施している業務の中で、どこの部分が経験でなければ習得できないものなのか、B・Cに分類してマニュアル化することでの属人化解消を実行できる部分がないのか。業務内容を分解していくことで本当にその方にしかできないことなのかを判断していくことができると思います。

多くの企業で業務分類を実施していただいた結果、A業務とB・C業務の比率は、概ね2:8となることが分かっています。つまり、全体の約8割の業務は、実際にはマニュアルによる形式知化に適しているということです。

「A業務は代替不可」という先入観を持ってしまうと、マニュアル化できる業務の見落としにつながります。「ABC分類」を実施する際は、フラットな視点を持ちながら取り組んでみてください。スタディスト坂野

まとめ

属人化の問題を後回しにすると、担当者の異動や退職で業務がストップしてしまうリスクが高まります。仕事が円滑に回っている今が、属人化解消に取り組む最適なタイミングです。

「現状の可視化」は、属人化の問題を効率的に解消する上で欠かせません。業務の「ABC分類」を正しく行うためにも、まずは企業のポリシーや目指す方向性を明確にすることから始めてみてください。

後編では、属人化解消に向けた具体的なアプローチについて詳しく解説します。